保険と自費のクリーニングの違い
歯科医院で受けられる「クリーニング」には、大きく分けて「保険診療」と「自費診療(自由診療)」の2つの種類があります。どちらも歯の清掃を目的としますが、目的、内容、使用される機材や材料、所要時間、費用などが大きく異なりますのでその違いを詳しくお話します。
保険診療のクリーニング
保険診療のクリーニングは、主に「歯周病や歯肉炎などの治療」を目的としたものです。つまり、すでに何らかの病気が発生している状態に対して行われる処置です。健康保険が適用されるため、患者は自己負担額(通常3割)で治療を受けることができます。
具体的には以下のような処置が行われます:
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歯石除去(スケーリング):超音波スケーラーなどで歯の表面や歯周ポケット内の歯石を除去します。
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歯周基本治療:歯茎の状態を確認し、歯周ポケットの深さを測定してから歯周病の治療を進めます。
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ブラッシング指導:患者自身が正しい歯磨きを継続できるように、歯科衛生士が指導します。
なお、保険診療でのクリーニングは「病気の治療」が目的であり、見た目の美しさや完全な着色除去を目的とするものではありません。タバコのヤニやワインによるステイン、茶渋などの着色汚れの除去は、保険の対象外となることが多いです。
また、保険適用のクリーニングは回数や期間に制限があることも特徴です。たとえば、歯石除去は原則として上下の歯を2回に分けて行い、短期間に繰り返し行うことはできません。
自費診療のクリーニング
一方、自費診療によるクリーニングは「予防」と「審美(見た目の美しさ)」を目的とするものです。健康保険の制約を受けないため、より自由度の高い内容で、患者の希望に沿った施術が可能です。代表的な自費クリーニングには、PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)があります。
PMTCでは、以下のような高度な処置が行われます:
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専用ペーストとブラシを用いた研磨:歯の表面をツルツルに仕上げ、再び汚れが付きにくくする。
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ステイン除去:エアフローや専用の機器を使って着色を除去。
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フッ素塗布:むし歯予防のためのフッ素を塗布し、歯を強化。
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舌や口腔内全体の清掃:口臭予防にもつながります。
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長時間の丁寧な施術(30~60分程度が一般的)
自費クリーニングのもう一つの大きな利点は、「患者が健康な状態でも定期的に受けられる」ことです。保険クリーニングは病気がないと行えないのに対し、自費なら歯科衛生士によるプロフェッショナルなケアを、月1回や数カ月ごとなど、希望に応じて受けられます。
費用の違い
保険診療では、1回のクリーニングで約1,500~3,000円程度(3割負担の場合)が相場です。これは治療内容によって前後します。
自費診療の場合、医院によって異なりますが、1回あたり5,000~15,000円程度が一般的です。特に、エアフローやホワイトニング効果のある施術を含む場合は、さらに高額になることがあります。
どちらを選ぶべきか?
選択のポイントは、「目的」と「現在の口腔内の状態」です。
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すでに歯周病や歯肉炎がある → 保険診療
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着色汚れを落としたい、予防的にケアしたい → 自費診療
また、「一時的な費用は抑えたいが最低限のケアは受けたい」という方には保険診療がおすすめですが、「より美しい仕上がりを求める」「予防に力を入れたい」という方には、自費診療が適しています。
まとめ
保険と自費のクリーニングは、似ているようで目的や内容に大きな違いがあります。保険診療は病気の治療、自費診療は予防と美しさの維持が目的です。自分のニーズや口腔内の状態に応じて、選択することが健康な歯を保つ第一歩です。