拡大床が原因で発生する可能性のあるトラブルとその対策
お子さんの歯並びや噛み合わせを整えるために使用される矯正装置のひとつに「拡大床(かくだいしょう)」があります。取り外しが可能で、成長期の顎の幅を広げるのに効果的な装置ですが、一方で使用中に思わぬトラブルが発生することもあります。
拡大床そのものが危険というわけではありませんが、正しい使い方を守らなかったり、装置が合わなくなったりすると、歯や歯ぐき、生活習慣に影響が出る可能性があります。今回は、拡大床を使うことで起こりやすいトラブルと、その対策について詳しくご紹介します。
- 装置が合わなくなり、痛みや違和感が出る
拡大床はスクリューを回して少しずつ顎を広げていく仕組みになっています。拡大量が適切であれば問題ありませんが、急に大きく広げすぎると、歯や顎に強い力がかかり、痛みや違和感が出ることがあります。
また、成長や歯の移動によって装置が合わなくなると、頬や舌に当たって口内炎の原因になることもあります。
対策
- スクリューは必ず指示された回数・間隔で回すこと
- 強い痛みや出血、違和感が続く場合は、無理せず装置を外して歯科医院に連絡する
- 定期的に歯科医院で調整を受けることで、装置のフィット感を確認する
- 装置の取り扱いによる破損や変形
拡大床は取り外しが可能なため、落下や強い力での扱いによって破損することがあります。特に樹脂部分や金属のバネはデリケートで、無理に曲げたり、清掃時に熱湯につけたりすると変形する可能性があります。変形すると歯に合わなくなり、矯正効果が得られないだけでなく、歯や歯ぐきを傷つけるリスクも生じます。
対策
- 装置を外したら専用のケースに必ず入れて保管する
- 清掃は歯ブラシと流水でやさしく行い、熱湯やアルコールでの消毒は避ける
- 壊れたり変形した場合は、自己判断で使わずに歯科医院に持参する
- 装着時間が足りず、効果が出にくい
拡大床は、1日12~14時間以上の装着が必要とされることが多いです。しかし取り外しができるため、お子さんが学校で外したまま忘れてしまったり、違和感を嫌がって装着時間が短くなるケースもあります。装着時間が不足すると予定通りに顎が広がらず、治療が長引いたり、効果が出にくくなったりします。
対策
- 保護者が装着時間を確認し、声かけを習慣化する
- 食事や歯磨き以外はなるべく装着するように伝える
- 子どもが装置を嫌がる場合は、違和感や痛みの有無を確認し、必要に応じて歯科医院に相談する
- 発音や食事に支障が出る
拡大床を装着すると、舌の動きが制限されるため「さ行」「た行」などが発音しにくくなることがあります。また、食事のときに噛みにくさを感じたり、食べ物が装置に詰まりやすくなることもあります。これらは多くの場合、一時的なものですが、お子さんがストレスを感じる原因となることもあります。
対策
- 発音練習を繰り返すことで徐々に慣れる
- 食事中は外してもよいことを伝え、装置の清掃を忘れない
- 食後は必ず歯磨きと装置の洗浄を行う習慣をつける
- 口腔内の清掃不足による虫歯や歯肉炎
装置をつけていると食べかすやプラークがたまりやすく、虫歯や歯肉炎のリスクが高まります。特に装置を清掃せずに長時間放置すると、細菌が繁殖して口臭の原因になることもあります。
対策
- 装置は毎日流水で洗浄し、柔らかい歯ブラシで磨く
- 歯も丁寧にブラッシングし、フロスや歯間ブラシも併用する
- 定期的に歯科医院で専門的なクリーニングを受ける
- 装置をなくしてしまう
取り外し可能な拡大床は、外したときに紛失してしまうことがあります。学校や旅行先などで紛失すると、治療が中断し、再製作のために費用や時間が余計にかかることになります。
対策
- 外したら必ずケースに入れる習慣を徹底する
- ケースを自宅用と持ち運び用の2つ準備しておく
- 万一紛失した場合は、すぐに歯科医院に相談し、治療の中断を最小限にとどめる
- 顎関節や歯の根への負担
まれに、拡大の力が強すぎたり、顎関節の状態に合っていなかったりすると、顎関節に負担がかかり「口を開けにくい」「顎がカクカク鳴る」といった症状が出ることがあります。また、歯根に過剰な力が加わると歯が揺れたり、歯ぐきに炎症が起こる可能性もあります。
対策
- 拡大量や装着時間は必ず歯科医師の指示を守る
- 顎の関節や歯に異常を感じたら早めに申告する
- 無理に自己調整をせず、必ず専門家に対応してもらう
まとめ
拡大床は、成長期にある子どもの歯並びや噛み合わせを改善するために非常に有効な装置です。しかし、使用方法や管理を誤ると以下のようなトラブルが発生する可能性があります。
- 装置が合わなくなることで痛みや口内炎が起こる
- 破損や変形によって矯正効果が失われる
- 装着時間不足で効果が出にくい
- 発音や食事に一時的な支障が出る
- 虫歯や歯肉炎のリスクが高まる
- 紛失による治療の中断
- 顎関節や歯への負担
これらのトラブルは、ほとんどが「正しい使用方法」と「定期的な歯科医院でのチェック」で防ぐことができます。保護者の方のサポートやお子さん自身の習慣づけが、拡大床治療を成功させるためにとても大切です。
拡大床を検討中、または現在使用している方は、不安や違和感を感じたらすぐに担当の歯科医師に相談し、安心して治療を進めていきましょう。