拡大床と他の矯正装置の違いとは?それぞれの特徴と選び方を徹底解説
「子どもの矯正治療を考えているけど、どの装置がいいのか分からない」
「拡大床って聞いたことはあるけど、他の装置と何が違うの?」
このようなお悩みを抱えている保護者の方も多いのではないでしょうか。矯正治療にはさまざまな種類があり、それぞれの装置に特性があります。とくに「拡大床」は小児矯正でよく使われる装置のひとつで、永久歯が生えそろう前の成長期に有効です。
この記事では、拡大床の仕組みや特徴を中心に、他の矯正装置(ブラケット矯正やマウスピース矯正)との違いについて分かりやすく解説します。お子さまの矯正装置を選ぶ際の参考にしてください。
■ 拡大床(かくだいしょう)とは?
拡大床とは、主に「顎の幅を広げる」ことを目的とした取り外し可能な矯正装置です。金属のネジが中央に埋め込まれており、それを少しずつ回して調整することで、上顎や下顎の骨を広げていきます。
【使用のタイミング】
拡大床は、主に6〜12歳ごろの「混合歯列期(乳歯と永久歯が混在する時期)」に使われます。成長途中の骨に働きかけることで、歯を並べるスペースを確保し、将来の抜歯を避けられることが期待できます。
■ 拡大床の特徴
◎ 顎の骨の成長を利用
拡大床は、歯を直接動かすのではなく、「歯を並べるための土台=顎の骨」を広げることが目的です。そのため、成長期の子どもにしか使えないという特性があります。
◎ 取り外しが可能
食事や歯磨きの際に外せるため、口腔内を清潔に保ちやすく、虫歯や歯周病のリスクが抑えられます。ただし、外している時間が長いと効果が出にくくなるため、装着時間の自己管理が必要です。
◎ 痛みが少ない
装置の調整はゆっくりと行うため、比較的痛みが少なく、子どもにとっても受け入れやすい治療です。
■ ブラケット矯正との違い
ブラケット矯正は、歯の表面に金属やセラミック製の「ブラケット」を装着し、そこにワイヤーを通して歯を動かす矯正方法です。もっとも一般的で、幅広い症例に対応できます。
【主な違い】
比較項目 |
拡大床 |
ブラケット矯正 |
主な対象年齢 |
6〜12歳(成長期) |
12歳以降〜成人 |
主な作用 |
顎の骨の幅を広げる |
歯そのものを動かす |
装置の着脱 |
可能 |
固定式(自分では外せない) |
清掃性 |
良い(外して磨ける) |
やや悪い(ブラケット周囲が磨きにくい) |
見た目の目立ちやすさ |
比較的目立ちにくい |
金属は目立ちやすい(セラミックは目立ちにくい) |
痛み・違和感 |
少なめ |
装置調整後に痛みが出やすい |
◎ ポイント
ブラケット矯正は、歯を細かく移動させたい場合に向いており、歯並びの完成度を高めたい中高生や成人に向いています。一方、拡大床はその前段階として「土台づくり」に特化した治療です。
■ マウスピース矯正との違い
マウスピース矯正は、透明な樹脂製の装置を用いて、歯を少しずつ動かしていく矯正方法です。装着時の見た目が目立たないことから、近年人気が高まっています。
【主な違い】
比較項目 |
拡大床 |
マウスピース矯正 |
主な対象年齢 |
6〜12歳(成長期) |
小学校高学年〜成人 |
主な作用 |
顎の拡大 |
歯の移動 |
装置の着脱 |
可能 |
可能 |
清掃性 |
良好 |
良好 |
見た目 |
目立ちにくい |
非常に目立ちにくい |
使用時間の管理 |
必要 |
必要(1日20時間以上推奨) |
◎ ポイント
マウスピース矯正は審美性が高く、思春期以降に非常に適した装置です。ただし、軽度〜中等度の歯列不正に適しており、複雑なケースには向かないことがあります。拡大床はそもそも「歯を動かす」よりも「並べるスペースを作る」役割が主なので、目的が異なります。
■ どの装置が最適?判断のポイント
矯正装置の選択は、次のような要素をもとに歯科医師が判断します。
- 顎の成長の状態(成長期かどうか)
- 歯の大きさと顎のバランス
- 噛み合わせのタイプ
- 将来的な抜歯の可能性
- 見た目や生活への影響
- 本人の年齢や性格、生活習慣
たとえば、「顎が小さくて永久歯が並びきらない」というお子さまには、拡大床でスペースを作るのが適しているケースが多いです。すでに永久歯が生えそろい、歯並びを細かく整える段階では、ブラケットやマウスピースの方が効果的でしょう。
■ 拡大床+他の装置の組み合わせもある
拡大床とブラケット矯正、あるいは拡大床とマウスピース矯正を「段階的に組み合わせる」治療もあります。たとえば、6歳ごろから拡大床で顎を広げ、小学校高学年でマウスピースを用いて歯を整えるといったケースです。これにより、より自然なかたちで歯並びを整えられます。
■ まとめ:拡大床は“将来の歯並びの土台”をつくる装置
拡大床は、子どもの成長期にしか使えない「今しかできない」治療です。永久歯が並ぶスペースをあらかじめ作ることで、抜歯を回避できる可能性を高めたり、将来の本格矯正を軽減できたりと、多くのメリットがあります。
一方、歯を正確に並べるにはブラケットやマウスピースといった「歯を動かす」装置の力も必要です。お子さまの成長段階や歯並びの状態に応じて、最適な治療を選択するためには、まず専門の歯科医院での精密な診断が欠かせません。
お子さまの笑顔と健康な未来のために、矯正装置の特性を知り、早めの相談を心がけましょう。