インプラント周囲炎とは?初期症状から予防法まで徹底解説

インプラント周囲炎とは?
インプラント治療を受けられた方にとって、最も注意すべき合併症が「インプラント周囲炎」です。
インプラント周囲炎とは、インプラント周囲の歯茎や骨に炎症が起こる病気です。天然歯における歯周病に相当します。歯磨きが不十分な状態が続くと、インプラントとその周辺組織に細菌(プラーク)が溜まります。その結果、歯茎や骨に炎症が生じてしまうのです。
天然歯の場合、歯と骨の間に「歯根膜」という組織があります。この歯根膜は、細菌の侵入を防ぐバリアとして機能します。また、噛んだときの衝撃を和らげるクッションの役割も果たしています。さらに、噛んだときの刺激を脳に伝える働きもあるのです。
しかし、人工歯であるインプラントにはこの歯根膜がありません。そのため細菌が骨に到達しやすく、進行が速いのがインプラント周囲炎の大きな特徴です。天然歯の歯周病と比べて、炎症の進行スピードが約10〜20倍も速いと言われています。

その一方で、痛みはあまりないため、自分ではなかなか気づきにくい点が注意を要するところです。気づいたときには既に進行していることも多く、最悪の場合、せっかく埋め込んだインプラントが抜け落ちてしまうこともあります。
日本口腔インプラント学会の調査によると、インプラント周囲炎の発症率は患者さま単位で10〜20%とされています。また、インプラント治療後5年以上経過した方のうち、約28%にインプラント周囲炎が認められたという報告もあります。決して珍しい病気ではないため、予防と早期発見が非常に重要です。
インプラント周囲炎の初期症状
早期発見が重要です。
インプラント周囲炎は、炎症が粘膜でとどまっている「インプラント周囲粘膜炎」という初期段階から始まります。この段階では、インプラント周辺の歯肉が腫れて、柔らかい感じになります。些細な変化なので自分で気づくことは難しいものです。しかし、定期検診をきちんと受けていれば担当の歯科医が気づき、症状の進行を防ぐことができます。
インプラント周囲粘膜炎の主な症状
- 歯茎の赤みや腫れ … 炎症が起こることによって、歯肉が赤みを帯びた状態になります
- 歯磨き時の出血 … 歯磨きの際や、腫れた部分を指で押すことで、歯肉から出血することがあります
- 歯周ポケットの形成 … 人工歯と歯肉の境目に隙間ができはじめます
この初期段階では、患部の洗浄やプラーク・歯石の除去といった処置を行います。同時に、ご自宅でどのようにセルフケアを行っているかチェックします。磨き残しが生じている原因を突き止めて、正しいケアを改めてレクチャーします。
初期段階であれば、適切な処置とセルフケアの改善によって、炎症を抑えることが可能です。この段階で対処できれば、インプラントを長く使い続けることができます。
中期症状への進行
中期では歯磨きの際に歯肉から出血したり、食事や会話の際にインプラントが不安定になっている感覚を感じます。歯周ポケット(歯やインプラントの周りにある薄い溝の部分)がかなり深くなっていることが、歯科医の診察時に確認できます。
痛みはほとんどありませんが、この段階になると周囲炎の治療として、インプラントの周りの歯茎を切開し、侵入している細菌を殺菌する必要があります。歯茎の切開から手術時の傷が治るまでに3カ月ほどかかります。
中期段階では、骨の吸収も始まっています。レントゲン検査で確認すると、インプラント周囲の骨が減少している様子が見られます。この段階まで進行すると、元の状態に戻すことは困難になります。
末期症状の深刻さ
末期では、顎の骨(歯槽骨)と結合していたインプラントが脱落した状態になっており、食事の際、物を噛むと痛みを感じたりします。また歯肉が膿んで口臭がすることもあります。インプラント体が大きく動揺し、場合によっては自然に抜け落ちてしまうこともあります。
この段階になると、一度インプラントを抜き、患部の治療を行う必要があります。治療後にインプラントを埋め込むことも可能です。ただし、その場合は改めてインプラント治療を最初から行うことになります。骨の再生治療が必要になることも多く、治療期間も費用も大きくなってしまいます。
インプラント周囲炎の原因
なぜ起こるのでしょうか?
インプラント周囲炎の最大の原因は「歯周病菌」です。お口の中が不衛生な状態になり、歯周病菌が増殖することによって引き起こされます。歯磨きがきちんとできていないと、歯周病菌は増殖してしまいます。
セルフケア不足による影響
インプラント周囲炎は歯周病と同じく、細菌感染によって起こる病気です。炎症が天然歯の周囲に生じた場合は「歯周病」、インプラントの周囲に生じた場合は「インプラント周囲炎」となります。
歯周病もインプラント周囲炎も、歯磨きが不十分で、汚れや細菌を落とし切れていない場合など、口内の清掃が行き届いていないことが原因となります。歯を失う主な原因は歯周病と虫歯ですが、その原因の1つがセルフケアの不足によるものです。
特にインプラントの場合、天然歯よりも細菌に対する抵抗力が弱いため、より丁寧なケアが求められます。インプラントと歯肉の境目、隣接する歯との間など、細かい部分まで意識して清掃することが大切です。
リスクを高める全身的要因
お口のケアの問題だけではなく、全身の病気や生活習慣とも関わりがあります。次のような要因がある場合には、特に注意が必要です。
喫煙習慣がある場合 … タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させる作用があるため、血流が悪くなります。そのため、栄養が行き届かず、免疫力が低下します。インプラントは、天然の歯に比べて歯周病菌への抵抗力が弱いため、喫煙習慣がある方は特に注意が必要です。喫煙者は非喫煙者と比べて、インプラント周囲炎のリスクが約5倍高いという報告もあります。
糖尿病がある場合 … 糖尿病の影響で血糖値が高いと、細菌に対する抵抗力が弱くなります。血糖値のコントロールができていれば、インプラント治療を行うことができる場合もあります。しかし、インプラント埋入後も、糖尿病のコントロールを引き続き注意していく必要があります。血糖値が高い状態が続くと、傷の治りが遅くなり、感染リスクも高まります。
貧血がある場合 … 血液には、病気を治すための白血球や栄養を運ぶ赤血球が含まれています。貧血の状態では、これらの働きが十分に機能せず、感染症にかかりやすくなります。また、組織の修復能力も低下するため、炎症が起こりやすくなります。
歯ぎしりや食いしばりの癖がある場合 … インプラント治療を行った部分に過度な負荷をかける癖があると、インプラント周囲の組織にダメージを与え、炎症のリスクを高めます。就寝中の歯ぎしりは自分では気づきにくいため、家族に指摘されたことがある方や、朝起きたときに顎が疲れている方は注意が必要です。
その他のリスク要因
上記以外にも、以下のような要因がインプラント周囲炎のリスクを高めることがあります。
- 過去に歯周病の既往がある … 歯周病によって歯を失った方は、口腔内に歯周病菌が残っている可能性が高く、インプラント周囲炎のリスクも高まります
- 定期メンテナンスを受けていない … 定期的なチェックを受けないと、初期段階での発見が遅れ、重症化しやすくなります
- インプラント周囲の骨が少ない … 骨の量が不足している場合、細菌感染に対する抵抗力が弱くなります
インプラント周囲炎の治療法
進行段階に応じた適切な治療が必要です。
非外科的治療
初期段階のインプラント周囲粘膜炎では、非外科的治療が中心となります。専用の器具を使用して、インプラント周囲に蓄積したプラークや歯石を丁寧に除去します。機械的な清掃に加え、抗菌剤の使用も効果的です。
定期的にメンテナンスを受けることで、炎症が粘膜でとどまっている状態なら、治療によって症状が改善されます。レントゲン検査や唾液検査による細菌の繁殖状況のチェック、歯肉の腫れや排膿の有無、インプラント体のぐらつき、口腔内の清掃状態の確認などが行われます。
また、ご自宅でのセルフケアの方法を見直し、正しいブラッシング方法や補助清掃用具の使い方を指導します。患者さまご自身のケアが適切に行われることが、治療効果を高める上で非常に重要です。
外科的治療
炎症が歯肉から歯槽骨にまで広がった場合、外科的治療が必要になります。インプラントの周りの歯茎を切開し、侵入している細菌を殺菌する処置を行います。歯茎の切開から手術時の傷が治るまでに3カ月ほどかかります。

外科的治療では、フラップ手術と呼ばれる方法で歯肉を開き、インプラント表面に付着した汚れや感染組織を徹底的に除去します。必要に応じて、骨の再生を促す処置を行うこともあります。
歯肉や歯槽骨が一度破壊されてしまうと、元の状態に戻すことはできません。そのため、予防をしっかり行なって、インプラント周囲炎を起こさないことが大切です。
インプラントの除去が必要な場合
重度に進行してしまった場合、インプラントを一度除去する必要があります。除去後は、感染した組織を取り除き、骨の再生治療を行います。その後、状態が改善すれば、再度インプラントを埋入することも可能です。
ただし、再治療には時間も費用もかかります。何よりも、予防と早期発見が重要であることを、改めて認識していただきたいと思います。
インプラント周囲炎の予防方法
予防こそが最も重要です。
インプラント周囲炎を予防するためには、定期的に歯科医を受診してインプラントと口内の状況をチェックしてもらうほか、ご自宅で正しくケアしていただくことが重要です。
毎日の歯磨きの徹底
丁寧にブラッシングし、デンタルフロスや歯間ブラシを使って汚れやプラークを着実に落としていきます。インプラントの周囲を丁寧にブラッシングし、定期的に歯科医院でプロフェッショナルクリーニングを受けることで、細菌の増殖を防ぐことができます。
歯間ブラシやデンタルフロスを使って、インプラント周囲の細かい部分までしっかりと清掃することを心がけましょう。また、定期的なプロフェッショナルクリーニングによって、歯石の除去も行うことが大切です。
特にインプラントと歯肉の境目は、プラークが溜まりやすい部分です。歯ブラシを45度の角度で当て、小刻みに動かしながら丁寧に磨くことが推奨されます。力を入れすぎると歯肉を傷つけてしまうため、優しく丁寧に磨くことを意識してください。
定期的なメンテナンス
インプラント周囲炎を予防するためには、定期的にメンテナンスを受ける必要があります。早期発見・早期治療によって重篤な状態になる前に対処することができます。
インプラント治療後の定期検診をきちんと受けていれば担当の歯科医が気づき、症状の進行を防ぐために患部の洗浄やプラーク・歯石の除去といった処置を行います。
定期メンテナンスでは、専門的なクリーニングだけでなく、レントゲン検査による骨の状態確認、歯周ポケットの深さの測定、インプラント体の安定性チェックなど、総合的な検査を行います。これらの検査によって、目に見えない部分の変化も早期に発見することができます。
生活習慣の改善
リスク要因の軽減も、インプラント周囲炎の予防につながります。リスクファクターとされる歯周病・糖尿病・貧血などの症状がみられる場合は術前にしっかり処置し、喫煙など血行を悪くする生活習慣をなるべく辞めることが推奨されます。
歯ぎしりや食いしばりなどインプラント治療を行った部分に負荷をかける癖のある方も、マウスピースの使用などで対策を講じることが大切です。就寝時に装着するナイトガードは、インプラントへの過度な負担を軽減し、長持ちさせる効果があります。
また、バランスの取れた食事や十分な睡眠、ストレス管理なども、免疫力を維持する上で重要です。全身の健康状態が良好であれば、口腔内の健康も保ちやすくなります。
メンテナンス頻度の目安
どのくらいの頻度で通院すべきでしょうか?

インプラント治療後は、3カ月から6カ月に1回の定期メンテナンスが推奨されます。ただし、お口の状態やリスク要因によって、より頻繁な通院が必要になる場合もあります。
歯周病の既往がある方や、インプラント周囲炎を経験した方は、定期的に歯科医院でチェックを受けることが特に重要です。継続的なサポートケアを受けた場合、インプラントの生存率は非常に高いことが報告されています。
また、喫煙習慣がある方、糖尿病などの全身疾患をお持ちの方、歯ぎしりや食いしばりの癖がある方は、より短い間隔でのメンテナンスが推奨されます。担当の歯科医師と相談し、ご自身に最適なメンテナンス計画を立てることが大切です。
メンテナンスで行われる検査
- レントゲン検査による骨の状態確認
- 唾液検査による細菌の繁殖状況のチェック
- 歯肉の腫れや排膿の有無の確認
- インプラント体のぐらつきチェック
- 口腔内の清掃状態の確認
- 歯磨き指導
- プロフェッショナルクリーニング(PMTC)
- 咬み合わせのチェック
これらの検査や処置を通じて、インプラント周囲炎の早期発見と予防を行います。定期メンテナンスは、インプラントを長く使い続けるための「保険」のようなものです。面倒に感じることもあるかもしれませんが、継続することで大きな効果が得られます。
まとめ
インプラント周囲炎は、インプラント治療後に最も注意すべき合併症です。
天然歯に虫歯や歯周病の予防が必要なように、インプラントを長く使い続けるためには、インプラント周囲炎の予防は欠かすことができません。日頃からプラークコントロールやリスク対策の重要性を理解し、適切に行う必要があります。
初期段階では痛みがほとんどないため、自分では気づきにくいのが特徴です。だからこそ、定期的なメンテナンスをしっかり行って、インプラントの健康を維持することが大切です。
インプラント周囲炎は、適切な予防とメンテナンスによって、そのリスクを大幅に減らすことができます。毎日のセルフケアと定期的な歯科医院でのチェックを習慣化することで、インプラントを長く快適に使い続けることが可能です。
愛彩デンタルクリニックでは、豊富なインプラント実績を持つ歯科医師による治療と、充実したメンテナンス体制を整えております。インプラント周囲炎の予防や治療について、少しでもご不安な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
詳しくは、愛彩デンタルクリニックの公式サイトをご覧ください。皆様の笑顔と健康なインプラントを守るため、スタッフ一同、全力でサポートいたします。
監修者情報
中村 貴美男(NAKAMURA Kimio)

